テオブロマ

真昼の用心棒のテオブロマのレビュー・感想・評価

真昼の用心棒(1966年製作の映画)
3.4
『荒野の用心棒』的なノリで付けたとしか思えない邦題。主人公トムは別に用心棒でも何でもないし、そもそも原題『Le colt cantarono la morte e fu... tempo di massacro』英題『Massacre Time』、要は『虐殺の時間』なので全然意味が違う。西部劇だからとりあえず用心棒ってしとこみたいな軽い感じで決めたんだろうなぁ。

酒場に「飲みたきゃ撃つな」と書いてあったり、謎の中国人が何故か吹き矢で援護してくれたり、孔子を語りながら棺桶作ってお代請求したり、結構笑える場面も多い。「金のある死人より生きた詩人がいい」は名言だと思う。
諸悪の根源であるスコットジュニアが何故かいつも白いスーツで決めてるのも、いきがってる割に結構なヘタレで小者臭がすごいのも笑えるけど、「パパ、最後まで聴かないの?僕を愛してる?一心同体だよね?」などとヤンデレサイコ発言をしてたのは怖かった。

飲んだくれのどうしようもない奴に見えた兄ジェフが実は曲乗りも早撃ちもできる凄腕ガンマンだったと判明するシーンは痺れた。決め台詞”Hey gentlemen!”をいちいち言う辺りにも自分の腕への自信と余裕が伺えるし、中盤以降は彼がかなり魅力的で目立ってきて、正直主人公トムが霞んで見えてしまうくらいだった。
ジェフがトムの本当の父親を撃ち、すわ兄弟で殺し合いかと思いきや、排莢して敵意がないことを示すシーンが好き。この2人は確かに兄弟なんだなと思った。ラストの共闘は本当にかっこいい。

額に風穴を空けられたキャラダイン一家若干ホラー)からのパンで明らかになる下手人、画面左上から右下へ広がる草原の斜面や水平に画面を横切る岩場を馬で駆け抜ける兄弟、小屋の小窓越しに切り取られた兄弟などなど、印象的で美しい構図やカメラワークが多くあり、それを観るのも楽しい。BGMもとても良い。

ラストはえっそこで?みたいなところで終わって拍子抜けするけど、全体的に満遍なく面白かったのでまた観たいなぁと思う。

ところでヤンデレサイコバカ息子役の人、何となく見覚えある気がして調べてみたら『シェルブールの雨傘』のギイだったのか…全然雰囲気違うから最初分からなかった。イタリア人なのにあんな流暢なフランス語で歌っててすごいなぁと思ったら、あれ吹き替えだったのね。なるほど。
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