YYamada

ロスト・イン・トランスレーションのYYamadaのレビュー・感想・評価

4.2
【戴冠!ゴールデン・グローブ賞】
 ~オスカー前哨戦を制した作品たち

◆第61回(2003)G.グローブ作品賞受賞
 (ミュージカル・コメディ部門)
◆同年のアカデミー作品賞
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』

〈見処〉
①「3人」の代表作
・『ロスト・イン・トランスレーション』は、2003年に製作されたアメリカ・日本合作のロマンティック・コメディ。
・舞台は現代の東京。ハリウッド俳優のボブ・ハリス(ビル・マーレイ)は、サントリーウィスキーのCM撮影のために来日したが、異国の文化に戸惑う。
・同じ頃、フォトグラファーの夫の仕事に同行し、東京に滞在中の若いアメリカ人女性シャーロット(スカーレット・ヨハンソン)。ともに孤独と不安を感じていた2人は、ホテルのバー・ラウンジで言葉を交わし、親しく話なる。
・ボブは滞在期間を延ばし、シャーロットとお互いの不安感や結婚生活について語り、時を過ごすが、ボブの帰国の時が訪れた…。
・本作は、東京にてファッションや写真を学んだ実経験をもとにソフィア・コッポラが監督・脚本化。スカーレット・ヨハンソン扮するシャーロットは、元夫のスパイク・ジョーンズに同行した際の自身がモデル。
・また本作の舞台、西新宿の「パークハイアット」は、ソフィア・コッポラが1999年にデビュー作『ヴァージン・スーサイズ』プロモーションで訪れ、「世界で一番好きな場所」となった思い出の場所。
・僅か400万ドルの製作費にて、27日間で撮影された「小作品」であるが、4400万ドル以上の米興収成功を収め、2004年のアカデミー賞の主要4部門にノミネート、ソフィア・コッポラは脚本賞を受賞している。
・撮影当時、32歳のソフィア・コッポラ、52歳のビル・マーレイ、19歳のスカーレット・ヨハンソン。ハリウッドの最前線で活躍する彼らであるが、現在も彼ら3人の代表作として輝きを放っている。

②タイトルの意味するもの
・「Lost in Translation」は、本作冒頭で、CM監督役ダイアモンド☆ユカイの演出シーンのとおり、「通訳の過程で意味が失われてしまうもの」と「人間関係における相互理解の難しさ」の2つを指している。
・本作は、その孤独感を増幅する演出として、日本語のセリフには意図的に字幕をつけず世界公開されている。藤井隆が扮する、摩訶不思議なTV司会者の話す言葉は、まさに「Lost in Translation」である。
・また、「日本人はLとRの違いがわからない」など、非常に具体的な脚本が印象的である。

③結び…本作の見処は?
○: 2人が文化の異なる環境での不安感が非常にリアリティーが高い。また、本作で描かれる「歳の差のある異性との関係」は、大なり小なり、多くの人にも同様の経験があるはずで、共感出来る点も多いはず。
○: 新宿、中目黒、渋谷、レインボーブリッジ、表参道…海外の監督が描く「東京」が見える。
▲: 日本人であるが故に、ダイアモンド☆ユカイや藤井隆のセリフが理解出来、「Lost in Translation」な環境で鑑賞出来ない。
▲: 「パークハイアットは逆!」。タクシーの移動場面の編集が気になって仕方ない。

・本作撮影当時、新宿パークタワーの外資企業で働いていた自分にとって、本作の描く異文化とのギャップにリアリティーを感じずにはいられない作品。
・パークハイアットのバーには、本作をテーマにしたカクテルがあったことを思い出しました。
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