模糊

ロスト・イン・トランスレーションの模糊のレビュー・感想・評価

5.0





【好ましい 孤独のあり方 閉じ方】





この世界のなかで、言葉が通じる相手に出会ったら。
見えなかった隙間に気づいてしまうタイミングもある。
人生は続くから、現実的な選択をする。
最後の囁きを贈れたから、受け取れたから、ふたりは元の生活に戻っていけるんだろうな。

非日常空間だからこそ際立つ、最も近く日常を共有しているはずの配偶者との溝。
トランスレーションのうちに欠落するもの、よりも、トランスレーションを要さないはずの最も近い他人との"分かり合えなさ"の方が堪えるよね。

ふたりの会話の絶妙な、知的な軽みが心地良かった。
東京の描き方も、"TOKYO"的かと思わせつつ、"東京"が見抜かれている感じで好感を持てた。

Lost in Translation.
異郷「東京」で感じる、翻訳過程で失われてしまうもの。
言語化しようとすると、抜け落ちてしまう自分の奥。
その迷いを受け容れて元の生活に戻る(?)彼女のパーソナルな感情を、不思議と理解出来てしまった。

2023年度最終日にベストムービー更新。

"ひび割れた玻璃ごしに
摩天楼の衣擦れが
舗道をひたすのを見たんです
模糊

模糊