takae

ロスト・イン・トランスレーションのtakaeのレビュー・感想・評価

3.7
仕事で東京に来ていたビル・マーレイ演じるハリウッドスターのボブと、カメラマンの夫の仕事についてきたスカヨハ演じるシャーロット。

状況は違えど二人に共通するのは孤独感と疎外感。
異国の地で言葉も通じない心もとなさや、どこか自分が浮いている感じ。周りがなぜ笑っているのか自分だけが分からずに、取り残された感覚。

日本人である私は劇中描かれている東京に少し違和感を覚えるところもありましたが、それは私が日本人だからだろう(当たり前だけど)
きっと彼らから見た「TOKYO」はこんな風なんだなと、そこはある意味リアルに思えました。

そして、言葉が通じず理解し合えないことだけでなく、彼らはパートナーとの間でも、言葉は通じていてもそばにいてもすれ違う孤独を感じている。

人って一人だから孤独なわけじゃなく、二人でいても大勢でいても孤独を感じるもの。
もしかしたら、一人でいる時よりも誰かといる時の方が孤独を強く感じるものなのかもしれない。

そんな二人が出会い、互いに通じ合うものを感じ、意気投合して少しずつその距離が縮まっていく。
話していて楽しくて、波長が合って、ぎこちなく固かった笑顔が消えて自然に笑えるようになる。よく眠れない夜も、そばにいると安心できて眠れるようになる。呼吸が楽になる。

こんな風に書くとまるで二人が恋に落ちたようにも思えるけど、決してそうではないと私は思います。

2人の添い寝のシーンがすごく好きなんだけど、何だろう、恋人とも友達とも違う、年齢からすると父娘のような感じもするけれど、そこまで濃く近いわけでもない。
同じような孤独を抱えた魂が寄り添っているような...二人の関係にそういうものを感じたのかも。

あとはやはり、愛は永遠ではないということ。

プリシラにも通じるけれど、出会った頃はあんなに愛していたのに...という、時間と共にパートナーとの関係性や相手への想いが変わってくること、その哀しさと諦めに似たような気持ち。
そして、これからの二人を思って途方に暮れてしまうような、そんな感情も描かれていました。

異国の地でそういう感情を持つもの同士が共鳴し合い、共に過ごした束の間の時間。

リアルでありながら叙情詩的な雰囲気とでもいうのか、ソフィア・コッポラの世界観、やっぱりすごく好きでした。

ラストシーンは自分でもびっくりするぐらい込み上げてくるものがあり、たくさん泣いてしまった。
だけどきっと、こういう終わり方が一番いいんだろう。

余韻が半端なくて、思い出すと胸がぎゅっと痛むほど。今観てよかった。やっぱり作品との出会いは必然だなと思いました。

他の作品も改めて観てみよう。

ユーモア溢れるビル・マーレイ、スカヨハの透明感と健康的な色気もすごく良かったです。
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