かめしゃん

ロスト・イン・トランスレーションのかめしゃんのレビュー・感想・評価

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あまり愉しめなかった
サントラ盤があれば充分かも(名盤と呼ばれていますね)

「ミッドナイト・ベロシティ」の記者会見の場面はなんかおもしろかった

日本の景色で、遠景で長回しで撮ると北野映画みたいになるのだな、というどうでもいい気付き

主演の二人の場面は総じてよかった

主演男性のような大人が、誰の周りにもひとりぐらい居てくれたらいいのに、という事を思った
しかし、それはいつの間にか自分の役割となっていて、ただ年齢を重ねただけでは誰も大人になんか成れないのだった 悲しいことに

「The 日本」を表現した場面が見どころとはなっているけど、今見ると特別批評性とか皮肉を感じるような描き方ではない(シン・ゴジラの方がよっぽど日本を皮肉っている)
それなのに、日本の側が勝手に自分で衰退していって卑屈になっている様に見えてくる(世界はそうでも日本はこうなんだ、と虚勢を張ることも最早出来ないほど酷い有り様である)

日本語が完全に分からない外国人が観た場合は面白さや普遍性も感じられるのだろうと思った(たぶんずっと同じ日本をイメージしていられるから)
しかし日本人が観た場合、どうしても文化や流行が風化してしまう その年代に固定されてしまい雑音になってしまう(そもそも私は、普遍性や匿名性を感じたいから洋画を観ているというのに)

日本人にとっては、この時代の日本はもはや古き良き日本ですら無いし、異国情緒を感じられるような見知らぬアジアでもない 
失われた30年とか言われるが、提示される一つ一つのパーツがあまりにも日本過ぎるんである しんど過ぎて見ていられない バブル崩壊以前のように馬鹿である事に無自覚でいられた平和な時代ではない
日本人であるが為に客観視が不可なんである

なのでこの映画は、2000年代初頭に、今の日本に続く歴史から分岐したパラレルな世界なんだと思ってしまうしかない この後につづく正史を考えてはいけない
若しくは、映画の状況はある種のファンタジーなんだと思ってしまうかである
私達はなにか悪い夢を見ている途中なのだ、と思ってしまうだとか

そんな調子で、この映画を普通には愉しめなかったのがかなしい
余計なことばかり考えてしまう
(CMのアイデアは良かったと思うけど「あ、ダイヤモンド✰ユカイさんだ」とか思いたくないし、サントリー自体がまず好きじゃない 製作に電通とかの広告代理店が絡んでるのも間違いない ちょいと出る藤原ヒロシがとても好きじゃない)

総括
この映画やソフィア・コッポラが良くないんじゃなくて、実際の日本がとても良くないんだということ
風景としての過ぎ去った日本は全然許容できるけど、コンテンツとしてリアルタイムなサブカル要素は出来るだけ排除して欲しかった
(オワコン化してしまったものを後々受け入れようがない)

二人のシーンとか良かった
すごい好きな映画になったのになと思うから残念です
かめしゃん

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