クリーム

切腹のクリームのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
4.1
こんな昔にこんなに美しい時代劇映画が製作されていたなんて、驚きました。OP映像からアートでした。時代劇は、躊躇してたけど、もっと早くに観れば良かったです。良い意味で時代劇っぽく無い。ただ、言葉の言い回しが若干理解出来ませんでしたが、その辺は気にしなくても雰囲気で大丈夫でした。
主人公の意図が、少しずつ明かされて行くのが面白く、脚本も素晴らしいので全く飽きずに観賞しました。これは、皆さん傑作と言われるのが頷ける作品でした。

太平の世·江戸。井伊家の屋敷に、安芸福島家元家臣、津雲半四郎と名乗る浪人が訪ね来て、困窮し武士らしく切腹したいので屋敷の庭先を借りたいと言う。家老の斎藤勘解由は、先日、同じ様な申し出に来た千々岩求女の話しをします。この頃、切腹志願は困窮した武士達の間で、切腹する気がないのに厄介払いの金欲しさに切腹志願詐欺が流行っていた。井伊家では世に警鐘を鳴らす為と、切腹にやって来た求女を慇懃かつ丁重に扱ったうえ、困窮し刀も質に入れてしまった彼に竹光で切腹させたと言う。
そんな話を聞いても半四郎は動じず、勘解由は切腹の準備を命じるのでした。



ネタバレ↓



半四郎は求女の義父で、求女は病気の妻子の為に最後の手段として、金欲しさに切腹に行ったのでした。
半四郎は介錯人に井伊家の中の達人、3人を使命しますが、3人共に病欠。
3人は、求女を死に追いやった者達で、半四郎が復讐として事前に髷を切り落としていた。彼等は、それを恥と認識し、毛が伸びる迄、仮病を使っていた。
勘解由はそれを知ると、井伊家の恥が明るみになる事を恐れ、半四郎を打ち取る様に命じます。
求女を容赦なく竹光で切腹させ、家臣が不覚にも髷を落とされた事が世に知られれば、幕府からのお咎めが避けられないと数十名の家臣が半四郎に襲い掛かります。半四郎は、多くを返り討ちにしますが、多勢に無勢。最後には力尽きます。
その後、勘解由は髷を落とされた3人を切腹させ、負傷者には手厚い治療をし、世間には、半四郎は見事切腹した事にし、死者はすべてが病死として報告する様、家臣に命じます。勘解由にとっては武士の面目などよりも、藩の存続が最優先であったのです。

最終的には全てもみ消すという権力者のやり口は、いつの時代も同じ。世の中なんてそんなものだと言うラストが、リアリティがあって良かったです。また、ラストの立ち回りは、迫力がありつつ、魅せる殺陣·刀捌きで、圧巻でした。観て良かったです。

*針さん、ありがとう♪︎
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