追記:2023/07/18㈫
池袋新文芸坐にて鑑賞。
映画館での鑑賞はもう十何回目かになりますが、やはり大きなスクリーンだと映像の細部までよく見えるのでありがたいです。
本作品を見ると、世の中が「酸鼻を極める貧困層」と「世襲によって衣食に困らない富裕層」とに分かれていること。そして富裕層は欺瞞と虚飾に満ちていて、公文書さえも(本作品では井伊家の「覚書」)平気で改竄することなど、今も昔も全く変わらないことが見事に描き出されていて、ただただ苦笑する他はありませんでした。
追記:2023/06/10
昔の邦画はセリフが聞き取り辛く、それだけで評点が低くなってしまう傾向にあります。
本作品も聞き取りにくいところがあり、また古い言葉が使われているので理解しにくいところが多々あります。
私は字幕付きのDVDを購入し、知らない言葉は辞書で調べて繰り返し、繰り返し鑑賞しました。
やはり邦画史上最高峰の作品だと思います。
私が心から愛する本作品について、これまで数多くの方々がレビューを投稿されていることを知り、私もお仲間に入れていただきたいと思って初めて投稿いたします。
屋上屋を架すことと知りつつも、この映画の好きなところを二つほど紹介させて下さい。
一つ目はやはり「脚本と編集の完璧さ」です。
無駄な台詞や場面、いわゆる冗長な部分が一切ありません。何かが不足していて唐突な印象を与えるような部分も全くありません。まるでモーツァルトの楽曲を聴いているかのごとく、物語が流れるように展開していきます。
二つ目は主役の仲代達矢さんが演じる津雲半四郎(つぐもはんしろう)の所作、特に「歩き方の美しさ」です。
半四郎が初めて井伊家の屋敷に入り、家老三國連太郎さんと対面する部屋に行くまでの歩き方。
半四郎が井伊家の誇る剣の達人、丹波哲郎さんと真剣勝負の対決場に向かって行く時の歩き方。
どちらも本当に堂々としていて美しいです。惚れ惚れします。
昨今の俳優さんの中にも演技の上手な方はたくさんいらっしゃいますが、仲代さんのように「ゆったりどっしり歩ける」役者さんはほとんど見ることができません。
私が「切腹」を初めて観たのははるか昔のことですが、この映画が「私の好きな邦画ベストテン」から落ちたことはありません。
確かに目を逸らしたくなる残酷なシーンがあります。幸せを感じさせてくれるようなシーンはほんの少ししかありません。そして話の後半は全く救いの無い絶望的なラストシーンへと一直線に向かっていきます。
それでも私は皆様に鑑賞されることをお薦めします。
是非ともこの映画の完成度の高さを堪能して欲しいと思います。
Chitiさんの感想・レビューにあるように、本当に「凄い」作品ですから。