井出

切腹の井出のネタバレレビュー・内容・結末

切腹(1962年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

平安が訪れると、武士は鎧の置物のように、うわべだけで生きるようになる。平和ボケってやつか。
心地よいところには安住したくなる。苦労を忘れて惰性で生きる。飢えを意識できない環境は人を弱くする。人間の弱さ。盲目。そして、飢えるものに倒される。無常だね。
いいセット、いい照明、いいカメラ、いい脚本。完成された美しさ。無駄のない、洗練された美。日本的。切腹前などの脂汗の撮り方が素晴らしい。三國さんも仲代さんもかっこいい。
そして何より音楽。強いのに、作品に調和している。武満徹だね。
とにかく、作り手がプロすぎる。個々が素晴らしいのに、皆がテーマのもとに調和している。恐ろしい時代。
私たちの命も武士と一緒。寝て食うだけでは成り立たない。髷を取られることは髪を切られることとは全く異なり、死を表す。私たちのなかにも、大切な人に裏切られれば、職を奪われれば、努力が報われなければ、死ぬ人はいる。生死は、心臓が動いているかでは決まらない。豊かになりすぎると、それはそれで怖いね。
井出

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