LalaーMukuーMerry

フェリーニのアマルコルドのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)
4.1
イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニのことは何も知らない、と書こうとしたが、「道」は彼の作品だと知った(知っとるやん!)
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で、この作品はいったい何なのだろう? ストーリーらしきものは特になし。ムッソリーニのファシスト党が政権を取った頃、1930年代のイタリアの地中海に近い町の素朴な人々の生活ぶりを、性に目覚めた悪ガキ?目線で描いた作品。悪く言えばお下品、よく言えばみずみずしい視線で、とりとめなくいろいろなエピソードが紡がれる。
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大樹に登っててっぺんから「女が欲しい」と大声で叫ぶちょっとおつむのおかしい伯父さん。真っ赤な衣装で色気ぷんぷんのグラディスカ姉さんの物語。巨乳の数学の先生、でも町で一番の巨乳はたばこ屋のおばさん、そのおばさんのお世話になった少年チッタ。おっぱい吸わずに吹いてどうする!
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チッタの家の食事風景、彼の素行のことでお前の育て方が悪いと母親に当たり始めるお父さん、夫婦げんか勃発。切れるとものすごく強くてお父さんもタジタジのお母さん。
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春を告げて空を舞う綿ほこりの中、魔女の人形を燃やすお祭り。積み上げた木の上に爺さんがまだ残っているのに火をつけて、いたずらを楽しむ大人たち。
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ボートを漕いで夜の海に出る人々。真っ暗な海でみんなが待っていたのは、この世のものとは思えないほど美しく輝く豪華客船の姿・・・
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アマルコルドとはどういう意味? それに「フェリニーの」をわざわざつけるのは何故?
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「アマルコルド」とはフェリーニの故郷に伝わる古い言葉「エム・エルコルド」がなまったもの。その意味は「私は覚えている」。つまり、この作品はフェリニーニ自身の少年時代の思い出をノスタルジーたっぷりに描いたものですね。主人公チッタはフェリーニ自身なのでしょう。 暗い時代のはずなのにとてもユーモラスで古き良き愛すべき人々、その中で育った自分の少年時代、戻ってこない過去への想いがじんわりと伝わってきて、良い作品だと感じました(個人的にはもっと幼い子供目線の方が好きですが)。音楽もいいです。