TAK44マグナム

グロテスクのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

グロテスク(2008年製作の映画)
3.5
白石晃士脚本・監督の拷問ホラー。
主演は長澤つぐみ。

白石監督の作品は初鑑賞。心霊系はあまり観ないからかな?
フィルモグラフィーを拝見する限り、しっかりと映画制作の勉強をされている方のようで、本作もやっていることは拷問一辺倒なのですが、意外と骨子がしっかりとしていて、ちゃんと最後まで観られる、言うなれば「本格拷問ホラー」として完成されています。
初デート中の初々しいカップルがキチガイ医師に拉致られて、ただただ肉体的・精神的両方の拷問を受け続けるという、シンプルこの上ない内容なのですが、根底にある「生命力への渇望」というテーマが貫かれていて好感が持てます。
こんなのに好感もっちゃ変態かもしれませんが、あくまでも「映画」としてですよ(汗)。誤解なきよう!

まあ、普通に嫌悪感しか感じられないとしても、それが多分、正常な感性だと思います。

登場人物は、ほぼ三人のみ。
拷問を受ける側のカップルと、孤独(その原因が強烈)から凶行に及ぶ医者の三人。
「僕をその生命力で感動させてくれ。感動させてくれたら解放する」と、ひたすらカップルを弄びまくります。

元AV女優の長澤つぐみなので当然のようにエロ描写もありますが、状況が状況なのでエロ目的で観るようなものではないです。ただ、ちゃんとAVのように、一通りのエロ手順は踏んでくれておりますので、男子向けのサービスとして捉えても構わないかもしれません。
エロい場面が終了すると、いよいよ本格的に拷問に移っちゃいます。ゴア描写が苦手な人はここで止めておいたほうが無難です。そんな人は最初から本作のような映画をチョイスしないと思いますけどね(苦笑)。
尺もそんなに長くないからか、はたまた医者がせっかちなのか、延々とエロを見せつけたかと思うと、いきなりチェーンソーという大物が登場します!
何のためらいもなく、とんでもなく残酷なことが、実に作業的に行われますよ!
チェーンソーの後も、男にしろ女にしろ、とりあえず一番やられたら嫌な事をされちゃいます。正確に言えば、「失ったら嫌な部位を失う」という事です(汗)。

散々酷い目にあった末に、長澤つぐみがある反撃に出るのですが、ここからの展開もびっくり仰天!
イギリスでは販売禁止、Amazonでも取り扱いが中止になったアンレイテッド版だと真のラストシーンが追加されているんですが、確かにこれは倫理的にどうなんだと思わされますね。

本作を鑑賞しているうちに、関よしみ先生の「愛の墓標」というホラー漫画を思い出しました。
「究極の愛」が存在するかを知りたい大金持ちが主催した、カップル限定で参加できる残酷ゲームのお話で、母親がギロチンで首チョンパ、友達たちはサメの餌になったり、とにかくもう悲惨なことばかり起きる中、主人公カップルが互いをかばい合って優勝して大金を得るんですけど、結局は・・・という、何ともブラックな漫画(関先生のホラー漫画はこんなのばかりで、特に有名なのは「バトルロワイアル」に先立って学生が殺し合いをする「血を吸う教室」です)なのですが、キチガイの目的が「愛の生命力で感動させてほしい」という点や、主人公女子が腕チョンパされる点などが似通っているなと思いました。
もっとも、本作に出てくるカップルは愛を貫き通して、本当に感動させてくれるところが違っていますけれども・・・。
それにしても、特に男の方は凄い!
どれだけ惚れたら、あそこまで彼女のために頑張れるのか?
「仕方ないよ~」とか、けっこう軽く言ってたりしたし(苦笑)

一般の映画ファンには決してオススメできるような映画ではないですが、特殊造形関係がかなり良い仕事をしているし、役者さんたちの演技も、目力とか鬼気迫るものがあるし、思いのほか見応えがありました。
ストーリーが全くないのを潔いとするかどうかが評価の分れ目のような気がしますが、個人的には、単純に「見てはいけない系のホラー」として堪能させていただきました。
ごちそうさま!