映画は遠い過去のはなし

水の中のナイフの映画は遠い過去のはなしのレビュー・感想・評価

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
3.7
◎登場人物3人だけ(「死と処女」もそうだったよな)ヨットの上の密室。
男と女、世代、格差の違い、2対1の人間関係から生まれる不穏な緊張感。

◎前半は特にドラマが動くことなく、とにかく芸術的なショットのオンパレード。
象徴的に映し出されるナイフ、雨、雲、葦、ロープ、座礁するヨット、綺麗すぎるほどの静かな凪。
妻の横たわる姿から始まり、大胆な遠近ショットによる3人の構図の変化。 
ヨットの上から垂直に捉えた人物ショットや下から帆を捉えたショットも絵になる美しさ。
そして1本のナイフが水の中に落ちた時にドラマが一気に動き出す。
それぞれの人間の弱いところが炙り出される。
妻の話を信じるか否か、選択を迫られる夫。T字路分かれ道。余韻を残すラストも素晴らしい。

◎妻の二面性。眼鏡を掛けてる時と外してる時。前半の謎めいてアンニュイな感じから、ナイフが落ちてからの激しい感情と艶かしさに恐怖を感じた。