Nakanishi

水の中のナイフのNakanishiのレビュー・感想・評価

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
3.9
決して面白い話ではありませんが、美しいショットと音楽、そしてナイフの緊張感で惹きつける。登場人物の誰にも共感できない…故に一歩引いた客観的な視点で鑑賞させる映画です。

以下は自分なりの解釈。

ナイフとは青年のアイデンティティ。武器になり、弱い自分を強く見せるのに便利な道具。でも時にそれが邪魔になることもある。ナイフが水の中に落ちたことで、アイデンティティという名のプライドや縛りがなくなった青年は妻と浮気をします。

良好とは言えない関係の夫婦は、青年の存在により仲睦まじい関係を演じていたわけですが、なんだかんだでお互いを認め合うことができるようになります。少し距離を置くことにより、相手の大切さを再確認するのです。要するに青年は噛ませ犬で、よく言えば円滑剤ですが使い捨て。結構ベタな話ですね。

ただ、大前提として登場人物の3人ともどこかズレています。全員「変」です。普通の人はヨットに乗せないし乗りません。その空気感や人物の存在感が絶妙に不快で緊張を与えます。これは意図したものというより、ポランスキーの性格が出てしまっているような気がしました。後にその不快感はローズマリーの赤ちゃんで遺憾なく発揮されるわけですね。なるほど!

そんな風に解釈しました。おそらく、数年後にまた観ると思います。
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