湯っ子

水の中のナイフの湯っ子のレビュー・感想・評価

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
3.8
なぜか男どうしのいがみ合いを三作続けて観ている。本作に登場するのは、年嵩の男、その美人妻、19歳の若者(おでこの皺が深々としていて、その年齢に見えなかったけど)。

狭い船の上で、男と男はピリピリとした緊張関係にあり、女はそれを静観する。
三者三様に、空虚さや退屈と、暗い熱を持て余していたから、刹那のいさかいは、ちょうど良い娯楽のようなものだったのかもしれない。
力を見せつけた男、出し抜いた青年、ふたりの男を罰した女。でもそれはみんな思い違いで、それぞれの無力さをあらわにしただけだったように感じる。



「イニシェリン島の精霊」のことをここでも考えてしまう。コルムは静かに暮らしたいなんて言ってたけど、それは嘘なのかも。その嘘に、自分自身も騙されてる。本当は島での暮らしが退屈すぎて、何か刺激や変化が欲しかったのかもしれない、自分では気づいていないけど。などと考えてしまった。
人間はエネルギーを持て余すと、余計な揉め事とかいさかいを自ら進んで巻き起こすようなところがあるんじゃないか。

息子らが幼稚園上がるか上がらないかくらいの時、雨の日に外で遊べないと、イライラしてわざとちょっかいかけて、ケンカばっかりしてたもんな…、それとおんなじなのかも。
湯っ子

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