スギノイチ

従軍慰安婦のスギノイチのレビュー・感想・評価

従軍慰安婦(1974年製作の映画)
4.2
スター俳優は全く出ていないが、その分、女性陣のキャラが立っている。
みんなの姉御、三原葉子。
前半ほとんどスッピンだろう。かなり気合が入っていたんじゃないか。
緑摩子はもう一人だけ存在感が桁違いで、序盤の喧嘩シーンからして素晴らしく、イラつきながら飯を頬張る演技も最高。
運動会の一連の演出は反則級に泣ける。
沢リミ子演じる朝鮮人の娘が、小松方正に騙された挙句に処女を奪われるシーンは痛々しいが、そんな目に遭いながらも健気さを失わない。自分を侮辱したにも関わらず、出兵する中田博久を送り出すシーンはとても健気だ。
叶優子や森みつ子は下品枠だったが、映画が暗くなりそうになるとすかさず下ギャグ(失禁等)をぶっこんで、雰囲気を明るくしていた。
主演の中島ゆたかは、ウブだった序盤こそタルいエピソードが続くが、後半になると余裕の笑みで性器を露出させるようになり、ぐっと持ち味が出てくる。
終盤、戦場に慰安婦たちが殴り込むという荒唐無稽な展開になった時、「やっちまったな」と思ったが、そこから締まったエンディングに繫がっていったのは、中島ゆたか関連のエピソードあってこそ。

この「慰安婦が参戦する」という展開は、石井輝男監督の戦争映画『いれずみ突撃隊』にもあった。
あの映画も兵隊と慰安婦を同列に扱い、戦場でも活躍させる珍しい映画だった。
『いれずみ突撃隊』でも『従軍慰安婦』でも、「兵隊と違って、慰安婦がいくら国に尽くして死のうと、誰にも顧みられない、靖国神社にも奉ってもらえない」といった趣旨の台詞が出てくる。
そして、本作『従軍慰安婦』の脚本は石井輝男。
あくまで高倉健主演の戦争活劇だった『いれずみ突撃隊』を、女性映画的に再構築した作品とも言える。
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