シャチ状球体

おもいでの夏のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

おもいでの夏(1970年製作の映画)
3.3
ある男性(ハーミー)の少年時代の思い出を(一部)繊細で叙情的な音楽や色使いで描く青春映画。

オープニングからエンディングと錯覚してしまうように切ないピアノのメロディが流れるのが芸術的。
主人公がのハーミーが恋をするのは夫のいる女性で、薄ぼんやりとした真っ青な空の下、彼女が住む海辺の一軒家を少年が訪ねていく構図が美しい。

友人たちとのホモソーシャルなノリが時々不快に思えることはあるけど、メインの恋愛はかなりプラトニック……かと思いきや、彼女の不幸に付け込むあまり健全ではない関係のはずなのにそこがフォーカスされないという歪さもあったりする。
この時代の映画は当たり前のように女性に対する差別的な価値観が内包されていて、その部分が非常に苦しいことが多々あるね……、

基本的には女性側の視点が描かれない、男性側の"ペーソスの混じったナルシシズムをノスタルジックに描写する"という側面が強い脚本で、別にそれ自体が悪いわけではないけれど、一流の音楽と画作りには似合わないキャラクター造形の甘さが目立つ。
薬局で会計が滞っているうちにどんどんアイスクリームが溶けていくシーンが一番面白かったかも。
シャチ状球体

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