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さすらいのカウボーイのAONIのレビュー・感想・評価

さすらいのカウボーイ(1971年製作の映画)
4.0
「放浪」と<家庭>、「父」なるW・オーツと<母>なるV・ブルームの間で揺れ動くP・フォンダ。 心の安息地を捜し求めて苦悩する姿に、彼の実生活が重なり合う。 画面に溢れる光の洪水は、あくまで優しくこの世界を包み込む。

旅仲間W・オーツが自由気ままな「放浪」の象徴とすれば、対してかつて捨てた妻V・ブルームは、安らぎはあるが何かと面倒な<家庭>の象徴ではないだろうか。 妻から、彼女(=家庭)と彼(=放浪)のどちらかを選べと迫られるP・フォンダ。当時「アウトロー」というレッテルを貼られていた彼の心の葛藤が垣間見れる。

また、その二人がP・フォンダよりも10歳近く年上という設定も興味深い。二人はP・フォンダにとって「親友」と<妻>という関係以上に、「父親」や<母親>に近い存在だったのではないだろうか。 家庭を顧みなかった(といわれている)偉大なる父親H・フォンダ。自殺という不業の最後を遂げた母親。 満たされなかった両親への愛情や反発が、この映画の中の彼の苦悩と重なり合って見えた。

逆光撮影&オーバーラップ編集を多用した見事な映像世界についても賛辞を書きたいが、長くなるので割愛。
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