Baad

パリ、ジュテームのBaadのレビュー・感想・評価

パリ、ジュテーム(2006年製作の映画)
4.2
作品の大半が売れっ子の監督よるものというオムニバスはやはり生きが良くていいな、というのが第一印象。

 一編一編が短い割にはつながりやまとまりがいい、というのが見終わってからの印象。

 オムニバス映画は、設定された時間によって出来がかなり左右されるのではないかと最近思う。例えば「セプテンバ-11」の11分ちょっとのフィルム1本を撮りきるまでの時間とか、シネマトグラフで撮った一分というのはそれなりにまとめやすい時間のようだ。逆に「10ミニッツオールダー」の10分はまとまる寸前にぷつっと切られてしまうという感じで物足りなかった。(これに関しては単にたまたま私の見た方が出来の悪い方の片割れだからそう思っただけなのかもしれないが。)

 その中でこの映画の5分というのはまとめるのでなく繋げるのにいい時間なのかもしれないと思う。全部まとめて一編のドラマの様にしたら、という無理な感想まで出て来てしまうくらいなのだから。最近流行のオムニバスの中では、これはかなり成功している方だと思う。

 ベスト5を選ぼうとしましたが、あまりうまくいきませんでした。なので、良かったと思った順にいくつか並べてみます。

トム・ティクヴァ編
ガス・ヴァン・サント編
アレクサンダー・ペイン編
この三本は文句なく上手かった。上手く出来た短編小説のような感じ。
最近のスター俳優を使っていない、あとの2本はさりげないキャスティングが素敵でした。

オリヴァー・シュミッツ編
これは、何となく好きでした。パリのもう一つの側面というところでは、他の2本より肩に力が入っていない分だけ心にしみました。古典的な題材をアフリカ系フランス人を使って撮っただけ、とも言えるんですけど・・・

シルヴァン・ショメ編
子供がランドセルを背負って立っている場面と他の部分のつながりが今ひとつだったのですが、大変な力作で、度肝を抜かれました。「ベルヴィル・ランデブー」を見逃したことを深く後悔。

オリヴィエ・アサヤス編
「10ミニッツオールダー」のジャームッシュ編とよく似たテーマですが、時間と空間の広がりがある分こちらの方が楽しかった。マギーが上手かったし。ただ、少しシニカルな落ちが今ひとつ好きになれませんでした。

イザベル・コイシュ編
フィレデリック・オービュルタン/ジェラール・ドパルデュー編
どちらも甲乙つけ難い、年を経た夫婦を中心にした三角関係の物語。
前者は映画として良かったし、後者は芝居と脚本が圧巻でした。

諏訪敦彦編
数少ないヒットメーカーじゃない監督さん。初めて作品を見ましたが、思ったより重厚でした。ラストにⅠカット、この短編の続きの映像が入るのが素敵でした。
近いうちに長編も見てみたいな。

で、最後にちょっと気になったのが、アルフォンソ・キュアロン編。
ごひいきのサニエが映っていたのに、パンフレットを見るまで気付きませんでした。主演女優の顔にぜんぜんライトが当たっていなかったってことでしょうか?
私が映像のトリックばかり探していたので見逃したのかもしれませんが、これはちょっとあんまりでは???
いくら最初のシーンにインパクトがあっても埋め合わせは効きませんぞ。

(つながりの良いオムニバス 2007/5/7記)
Baad

Baad