ブラックユーモアホフマン

トカレフのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

トカレフ(1994年製作の映画)
4.6
これは物凄い。

普通の映画なら描きそうなストーリーテリングの細部を大胆に省略している一方で、普通の映画ならもう少しサラッとしか描かなそうな瞬間をスローモーション等を使って引き伸ばす。その演出の異様さも目を見張る。

前半の展開は黒沢清の『蛇の道』も想起し、全体的なトーンは北野武や瀬々敬久『冷血の罠』、『女優霊』や『呪怨』のようなJホラーにも近い、まさに90年代日本映画な冷たさと不穏さ。大好物。

更にはデヴィッド・フィンチャーの『セブン』や『ファイト・クラブ』も個人的には想起したりして、同時代の映画って海を越えて影響を与えあったりするんだろうかと考えたりした。

また恐らくその時代の日本映画やアメリカ映画にも影響を受けたであろう、2000年代以降韓国映画の源泉も感じた。

拳銃を男根のメタファーとして捉えるのは安直すぎるかもしれないが、やはりクライマックスは狂った男性性の暴走と対決としか思えず、また渦中にいたはずの女は最早蚊帳の外というのも皮肉っぽくて面白い。
真理子哲也『宮本から君へ』やペキンパー『わらの犬』、ジェームズ・ガン『スーパー!』等とも通ずるものを感じた。

最後、三池崇史『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のようにどこからともなくバズーカが出てきて地球が爆発するんじゃないかと思ったけど、さすがにそんなことは無かった。

ビデオテープとブラウン管の映像、という質感も90年代ならではのものだなと思いつつ、バスというのもこの頃の映画によく出てくるモチーフかもしれないと思った。青山真治『ユリイカ』とか、北野武『あの夏、いちばん静かな海。』とか。

【一番好きなシーン】
・まずはやはり冒頭。
・最後の佐藤浩市。