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トカレフのべるのレビュー・感想・評価

トカレフ(1994年製作の映画)
3.6
当時、岡山では上映されてなくて一人で大阪まで観に行った。
楽しく明るい銃撃戦かと思ったら、息子を殺し、妻を奪った男を探し、追い詰め、撃ち、殺す物語だった。
独身の時に観てよかった。息子が生まれた後に観たら全く印象が異なると思う。

さて阪本順治。
例によって低予算、シンプルな脚本こそが真骨頂である。
なんてことない小道具、例えば黒いゴミ袋も新聞印刷するインクもきゃい〜んの漫才も(ちゃんと新聞ネタ)雑踏で交通量調査(のフリ)するのも燃える風車も全てを叙情的でナラティブに切り取る。

特に大和武士が街で芹沢正和を見つけ、コイツ共犯者じゃないかと疑い、芹沢は最初大和が誰か解らず、「間違いないコイツだ」と「コイツもしかして」が表情の切り返しで展開する、この緊張感、画面に釘付けになる。

クライマックスの銃撃戦、演出やセリフ回しが実に映画的で、復讐に燃える大和武士が哀しくカッコ良い。でもたくさんの人の理解は得られないだろうなと思いながら劇場を出た。

ハッピーエンドじゃないけどこういうのも好きだ。
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