アニマル泉

突然炎のごとくのアニマル泉のレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
4.5
トリュフォー十八番の「高さ」の主題が際立つエネルギッシュな作品である。なんと言っても劇中の2回のカトリーヌ(ジャンヌ・モロー)の衝撃的な川への落下である。カトリーヌとジム(アンリ・セール)の逢引きを二階からジュール(オスカー・ウェルナー)が見ている高低差も怖ろしい。ジュールとカトリーヌの新居は坂に建っていて、ジムが泊まる隣りの家からも見下ろす高低差の関係にある。トリュフォーは「階段」と「橋」の主題が重要だが本作でも頻出する。象徴的なのが「橋」だ。前半に3人が一直線に延々と続く長い橋を走り切る。3人を永遠に祝福するかのような至福の橋だ。対してクライマックスでカトリーヌとジムの車が走る橋は途中までしかない。絶望の橋である。
撮影はラウール・クタール。奔放なカメラワークだ。トリュフォー好みの俯瞰ショットはカトリーヌが車をぐるぐる乗り回して威嚇するのを俯瞰で捉えたショットが面白い。トリュフォー十八番の「自転車」「列車」も活躍する。列車の空撮ショットはトリュフォーにしては豪華だ。
本作はジャンヌ・モローが素晴らしい。男たちを翻弄する大胆でしなやかで繊細で官能的で動物的なヒロインを見事に生きている。後半のジュールとカトリーヌのツーアップ、泣きながら接吻するショットが素晴らしい。ここまで我慢していたのが迸るかのような情熱的で官能的なツーアップである。二人を同時に愛する女と男二人となればルビッチの傑作「生活の設計」を思い浮かべるが、本作は艶笑劇というよりは重くウェットだ。白黒シネスコ。
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