ゆみモン

祭りの準備のゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

祭りの準備(1975年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【2023年2月28日 再鑑賞】
以前観た時にレビューを書いていなかったので、気になって再鑑賞。
スコアも少しアップ。

やっぱりATG映画は好きだなぁ。
この土着感、閉塞感。
1975年公開作品だが、舞台は昭和30年代はじめ。
高知県中村市という漁村。
集落全体が親戚のような、どの家族の誰がどうしたとか、ほぼ筒抜けの暮らし。

主人公の青年(江藤潤、デビュー作?)は信用金庫に勤めているが、脚本家を目指している。が、具体的に勉強している訳でも執筆が進んでいる訳でもない。憧れの同級生・涼子(竹下景子)は真面目で、彼はHな妄想だけを一人もてあます日々。

青年の父は女にだらしなく、自宅に寄り付かず、愛人宅で暮らしている。元愛人と現愛人が大喧嘩しても我関せずで、息子と愛人宅で食事をする。もちろん村中が周知の事実。

青年の友人が刑務所に入ることになると、その間妻を頼まれたと、当たり前のように男の兄?(原田芳雄)が妻と関係する。
大坂に行っていた兄弟の妹・タマミがヒロポン中毒で脳を病んで戻って来る。村の男たちは当然のように、タマミを性の相手にする。
青年の祖父もタマミに溺れ、やがてタマミは妊娠。祖父は自分の子どもだと主張し、タマミの面倒をみることに。しかし、出産したタマミは正気に返り、一緒になれなくなった祖父は自死する。

あんなに堅物だった涼子は、憧れていた活動家と寝たことでヤケになったのか、自分から青年に迫ってくるようになる。

友人の出所と入れ替わるように、兄(原田芳雄)が強盗殺人で手配されてしまう。
東京行きを決意した青年は、駅でその男(原田芳雄)と出会う。
金を無心されるが、青年の東京行きを知ると、男は金を受け取らず返す。
原田芳雄はこういう、悪人なのかもしれないが、何故か憎めないキャラクターが多い。この作品でも、特に良かったシーンが二つある。
一つは、このお金を絶対受け取らなかったところ。
もう一つは、何人かで女性を買いに行った時、どの娼婦も足の不自由な男の相手をするのを嫌がった時、テーブルをひっくり返して怒ったところ。

戦後、世の中が進歩発展して、情報も広がっていき、日本中の多くの若者が自由な夢を見たことだろう。しかし、見せられた夢は誰もが叶えられるものではなく、何の準備もなくただ都会へ行けば何かになれる訳ではないことを思い知らされたのだ。