みおこし

ローマの哀愁のみおこしのレビュー・感想・評価

ローマの哀愁(1961年製作の映画)
3.5
女優さんの中で永遠の最推しはヴィヴィアン・リーなのですが、その割に代表作(『風と共に去りぬ』や『哀愁』、『欲望という名の電車』とか)以外をしっかり鑑賞できていないことに気づいたので観てみることに。フィルモグラフィーを振り返ると、改めて寡作な女優さんなのですね…。そんな彼女が48歳の時に出演したテネシー・ウィリアムズ原作の作品がこちら。

かつては大女優として名を馳せるも現在はキャリアもスランプに陥り、さらには夫を突然亡くして失意のどん底にあるカレン・ストーン。イタリアはローマを訪れ、高層アパートで一人暮らしを始めるも孤独な日々を送っていた。そんな彼女に対し、有閑マダムにジゴロを斡旋するビジネスを密かに営んでいるゴンザレス伯爵夫人は、パオロという若者を紹介する。野性的な魅力あふれる若者パオロに瞬く間に恋に落ち、人生のきらめきを取り戻し始めるカレンだったが…。

テネシー・ウィリアムズの作品は薄幸の女性ばかりが主人公になりがちですが、まさにこのお話も同じく。輝かしい過去に思いを馳せながら、孤独を埋めるかのようにパオロとの関係にどんどん依存していくカレンの姿が痛々しい…。しかもヴィヴィアン自身もこのときは統合失調症やローレンス・オリヴィエとの離婚などプライベートがガタガタの時期で、このたった6年後に53歳の若さで他界していると考えると、どこか寂しいカレンの姿と重なるところがあってなおさら観るのが辛かったです。しかし、当時アラフィフを迎えていながらも、凛とした美しさとどこか物憂げな佇まいは健在。『風共』で魅せたような情熱的な印象とは対照的なキャラクターを熱演していて、カレンとは異なり実際のヴィヴィアンは生涯“大女優”のままだったんだなとしみじみ。
パオロを演じたのは、まだ『俺たちに明日はない』でブレイク前のウォーレン・ベイティ。やっぱり若い時から独特のワイルドな魅力があって、カレンが彼に夢中になる理由も伝わってきました。伯爵夫人とカレンの板挟みになって苦悩する姿も印象的でしたが、熱しやすく冷めやすくて平気でちょっと残酷なことができちゃうあたりはいかにも若者らしいな、と(笑)。
物語のキーパーソン的存在、ゴンザレス伯爵夫人を演じたロッテ・レーニャがとにかく圧倒的存在感!!ド迫力!!(笑)世の中の理を全て分かっているようなあのどっしりとした貫禄、本作でアカデミー助演女優賞にもノミネートされたとのことですが納得。

ローマは個人的に明るいイメージがあるのですが、本作で描かれるローマはどこまでも物悲しくて退廃的。先の見えない、刹那的な恋に身を焦がす中年女性の性(さが)を描いた秀作でした。
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