ジャイロ

ザ・ファミリーのジャイロのレビュー・感想・評価

ザ・ファミリー(1973年製作の映画)
4.0
コッポラの『ゴッドファーザー』が1972年

フライシャーの『ザ・ファミリー』が1973年

それは二番煎じなのか、柳の下のどじょうなのか、ジャンル問わずどんな映画でも引き受けるフライシャー監督の匠のワザを見極めてみようと思いました。


しかしここで問題が発覚


『ゴッドファーザー』をまともに観ていなんです。

一番煎じのお茶を飲んでいないし、一匹目のどじょうも見ていない。つまり比較できません悔しいけど。


原題『THE DON IS DEAD』


DQNではありません。DONです。ドンが死ぬところから始まります。それはつまり、ドンのシマがねえ、空いちゃうんです。そう、これは利権を巡って血で血を洗う真っ赤な抗争の始まりの予感…

始まりの4分間、張り込みしたり電話したり色々動きはあるのですが、この間セリフが全く無い。無言の意志疎通。この演出がかっこいい。さすがフライシャー監督。さらにこの独特な音楽。なんという緊迫感。数々の名作の映画音楽を手掛けたジェリー・ゴールドスミスさんです。いい仕事しますね。

暴力で他人を傷つける者は、暴力で傷つけられる覚悟がないとダメです。すぐキレる。ファミリー以外は殴る蹴る。女にだって手をあげる。忍耐力がゼロ。うん。そうなるよね。

裏で暗躍する暗黒卿。スカイウォーカーのファミリーの物語は終止符が打たれたばかりなのに、こっちのファミリーの物語は受け継ぐ者のフォースが足りないせいでぜんぜん終わりが見えない。搦め手から攻められて、このファミリーの面々は、愛憎渦巻く血みどろの舞台で踊り出すのです。

委員会の決定を待っていては間に合わない。

感情に走るな。それは暗黒面に繋がる。落ち着け、冷静になれ。戦争を止めろ!!

スター・ウォーズにハマった長男が言ってました。

「すべてはバランスだよ」と

委員会がバランスをもたらすのか、それとも暗黒面が蹂躙するのか、暴力を振るってきた者たちに、暴力の鉄槌が下されるのです。愛する者を奪われたら、その代償を支払ってもらう感じで。

お互い血の涙を流しながら、もはや後戻りなどできなくなってしまいます。まさに因果応報、銀河往訪、仁義などあって無さそうなこの業界に暗黒面の帳が下りていきます。破滅の未来しか見えなくなってしまいます。

もうダメだ

そう思いました

その一杯は、起死回生のワインなのかそれとも最期のワインなのか、このシーン、ドキドキしましたね。終盤のこのワインを飲むあたりから面白さが加速していきます。これからいったいどうなってしまうのか、ぜんぜん予測がつかない。

池田屋の階段落ちの次の次くらいにランクインしそうなこの階段のシーンが個人的にはすごく好きです。(でも『ヴァリエテ』の階段落ちには勝てないかな…あっちはホラ、殿堂入りだから)

無駄を省いたテンポの良い殺し合いの応酬、ド派手な爆発、そして俳優陣の渋い演技。複雑な人間関係とその感情の裏側を、セリフを極力少な目にして絵で観せる。ラストに漂うこの得も言われぬ哀愁は、フライシャー監督らしい匠のワザですね。