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渦の3104のレビュー・感想・評価

(1961年製作の映画)
3.7
映画輸入会社の社長(佐田啓二)と、仕事に入れ込み自分に冷たい夫に不信感のようなものを抱くその妻(岡田茉莉子)。
倦怠期といってもいい2人の前に登場する、戦災孤児、翻訳担当の女性、プレイボーイのピアノ教師たち。
彼ら彼女らの言動や行動に、結果的に更に揺るがされる夫婦仲。不必要に掻き立てられた感情がぶつかり、夫婦を中心とした登場人物達の間を渦巻いてゆく・・。

ちょっとした行き違いと説明不足や意固地なプライドが、最初は些細だった事態をどんどん悪いほうへ引き込んでゆく。そのまま息詰まる展開になるかと思いきや、中盤に意外なシーンが登場する。
佐田に想いを寄せる翻訳の女性(岩下志麻)の存在が引き金となって起こる、佐田と岡田の「口ゲンカ」がそれ。抱えていた感情をある程度爆発させるシーンなのだが、ここの両者の会話の“ズレ加減”が妙におかしい。特に岡田のややヒステリックな絡み方が、得も言われぬ笑いを引き起こす(実際に劇場でもオフビートな笑い声があがっていた)。
どこまでが意図したものかはわからぬが、いわゆる「不倫もの」として少し筋が弱い作品に不思議なアクセントを加えていたように思う。

主要キャストは前述3人の他には物わかりのいいサブリどん、プレイボーイが板についている仲谷昇、意外に重要な役割を果たす戦災孤児役の石川竜二など。翻訳女性を演じる岩下志麻の落ち着きとそこに仄かに(しかし確実に)窺える色気が目を引く。当時20歳とはとても思えぬ佇まい。

しかし佐田啓二が買い付けてきて社運を賭けているドイツ?映画『罪なき女』は、試写シーンで観る限りは古臭くて面白くなさそうだったなぁ。
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