サイクロプス

ブルゴーニュで会いましょうのサイクロプスのレビュー・感想・評価

3.5
ワイン好きは必見!
カベソーよりピノが好きな人とか
「神の雫」を全巻読んじゃった人とか
甲府辺りのワイナリーを訪ねたことがある人とか
観ておいて損はなさそう


普段はビール星人の僕も、寒くなるとワインをよく飲む
で、ワインに関わる映画に触れる機会も増える
去年の冬は「サイドウェイ」を友人にすすめられて観た
結構当たりで、カリフォルニアのワイナリー旅道中を大いに楽しんだ
今年はこの映画をすすめられたわけだ

ワインの作り手は「醸造家」っていう
葡萄畑を相手にする農家だし、
資金繰りに奔走する中小企業経営者だって実情がよく分かる
社会科の教科書的にいうと家内制手工業

ビールのような大規模工場生産じゃない分、
作り手の工夫や努力がダイレクトに味に出る
そういうプロセスが、「はたらくおじさん」よりもリアルに、
プロジェクトXよりもドラマティックに実感出来る映画だ


この映画の原題は 「Premier Cru」(プリュミエ・クリュ)
ブルゴーニュ最高級の「Grand Cru 」(グラン・クリュ)に次ぐ、高級ワインを示す格付け
舞台は、そんなポテンシャルを持つ畑
フランス革命以来、マレシャル家引き継がれてきたそうだ
父親が倒産寸前まで追い込まれたところに、
家を飛び出していた息子が立て直しに帰ってくる、というのが映画の筋立て


多少のワイン知識があれば、
ワインの個性を引き出すテロワール
クロドヴージョ城での出版記念イベント
コート・ド・ボーヌの北に位置するコルトンの丘
畑の区画によって異なる収穫のベストタイミングetc.
興味は尽きない。。。

でも、この映画の醍醐味はそこじゃない(と思う)
反発しあう父と息子のぶつかり合い
二代に渡って惹かれ合う、隣接両家の男女
よそ者を寄せ付けないブルゴーニュの保守的な土壌
そんな泥臭い人間模様こそが、この映画の主題だ(と思う)


とにかく、丘陵一面に広がる葡萄畑は見てるだけで美しく
何度も試飲される赤ワインは、匂いたつほどに美味そうで
フランス人は田舎の農家でも美男美女
小難しいことを考えなくても、本能で楽しめる映画だ(と思う)