TAK44マグナム

クリープスのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

クリープス(1986年製作の映画)
4.0
頭がパッカーーン!


きっと、「レディプレイヤー1 」を観て涙を流して喜んだに違いない(←勝手な想像)、永遠のオタク小僧フレッド・デッカー監督・脚本によるデビュー作。
長らく「ロボコップ3」の呪縛から逃れられずにいましたが、最近では盟友シェーン・ブラックの「ザ・プレデター」の脚本で返り咲いた感がありますね。
ちなみに、シェーン・ブラックは本作にカメオ出演しております。

主役のボンクラ大学生クリス・ロメロを演じているのはジェイソン・ライヴリー。
ブレイク・ライヴリーの実兄なので、「俺ちゃん」の義理の兄貴ということになりますね!

その他、キャメロン刑事役に「リーサルウェポン」のトム・アトキンス。
過去の事件に囚われつつ、ゾンビ退治に活躍する格好いい役です。
シェーン・ブラックに「リーサルウェポン」のリッグス役をオファーされたんですって。
トム・アトキンスのリッグス!
まったく想像できませんし、スタジオがOKするわけないと思いますが、何だかシェーン・ブラックらしいエピソード。

あと、B級ホラーでよく顔をみるディック・ミラーが特別出演。
なんともいえない目尻の長い皺!
ヒロインのシンディ・クローネンバーグ役の女優さんは知らない方でしたが中々の美人さんです。
仕草と声が可愛い♪

役名でお気づきかもしれませんが、実にオタクっぽいですよね。
登場人物の名前がジャンル映画の大御所ばかり揃っているんです。
ロメロ、キャメロン、クローネンバーグ・・・主人公の親友はJ・C。言わずもがな、ジョン・カーペンターですね(苦笑)
それと、通っている大学はコーマン大学ときたもんだ!


そんなフレッド・デッカーの趣味全開な本作は、宇宙人が作り出した宇宙ヒルが地球に飛来するという迷惑千万なお話。
宇宙ヒルに寄生されると脳みそに卵が植えつけられちゃいます。
その間はゾンビにされてしまい、移動してから孵化、頭がパッカーンと割れて大量の宇宙ヒルが飛び出してくるのです!
飛来したのは1959年。
殺人鬼が精神病院を脱走する事件が起きた夜でした。
1組のカップルがいて、宇宙ヒルが男に寄生、女子の方は殺人鬼の毒牙にかかってしまいます。
それから27年後、宇宙ヒルが寄生したまま密かに冷凍保存されていた男を主人公たちが蘇らせてしまったことから、とんでもない事件に発展してしまいます。


荒唐無稽で笑うしかないのですが、宇宙人に殺人鬼、そしてゾンビと好きなモノを全部つめこんでやろうというフレッド・デッカーの心意気は一片の曇りもなく正義でしょう!
ごちゃまぜにした割には程よくまとまっており、青春SFホラーとしての完成度が高いのに驚きです。
確かに処女作ということで雑な部分もあるし、低予算だからSFX関係もチープなのも否めませんが、それらを補ってあまりある魅力が備わっているのも事実。
その魅力の元となっているのは、他ならぬ作り手の情熱です。

本格的なゾンビホラーとなるのはかなり終盤に入ってからなのですが、そこに至るまでも、ゾンビとなった者が宇宙ヒルを拡散し、それを捜査するトム・アトキンスの過去にまつわる殺人鬼の事件がうまく融合して飽きさせません。

ボンクラ主人公のロマンスは割とどうでもよいのですが、それでもクライマックスの盛り上げに一役買うし、2人を応援する親友J・Cの録音テープは涙なくては聞けない感動シーン。
こんなアホくさいジャンル映画でも、ちゃんとドラマを用意して泣かせにもくるなんて、フレッド・デッカー恐るべし!

前半が少しまどろっこしいですけれど、いやコレ本当に埋もれさせとくには勿体ないほど面白いよ。
海外では評価されていますが、日本だとDVD化もされていないなんておかしいでしょ。
同じくフレッド・デッカー監督作の「ドラキュリアン」はブルーレイまで発売されたことだし、本作もお願いしたいですな!
まぁ、あの頃のB級ジャンル映画好きじゃないと、琴線に触れないような気もしますけれど・・・(汗)

そんなわけで、何かと話題のジェームズ・ガンも「スリザー」の元ネタにしたに違いない本作、ソフト化を待てないので某所にあがっているのを観てしまいました。
ブルーレイ出たら絶対に買います!
80年代のレンタルビデオ屋の奥の方にある棚の前で、少ない小遣いを握り締めながら何時間も何を借りようか迷っていた、あの頃にひと時でも戻してくれるタイムマシーンな良作。


※ありがたいことにブルーレイ発売しています(2019年6月現在)



某動画サイトにて