いの

ハメットのいののレビュー・感想・評価

ハメット(1982年製作の映画)
3.6
今年の春にヴェンダース監督作品をU-NEXT(+映画館)で観てたけど、中座したままになってたので、またぼちぼち観ていこうかと。

映画のタイトル『ハメット』は、“ダシール・ハメット”のことだった。彼は、ピンカートン所属の探偵からハードボイルド作家に転身した実在の人物だ。なんと、わたしは今ちょうど『血の収穫』を読んでいるところで(半分まできた)、この偶然に昂ぶった。ダシール・ハメットが描く探偵は、『血の収穫』においては、町の中枢部に座して甘い蜜を吸っている腐りきった支配者たちを暴き出し町を浄化したいと、命の危険と隣り合わせのなかで探偵稼業に勤しんでいる。この映画でもそういうことなのかなぁと思いつつ観ていた(けど、どうやらそういうことではなかったみたい。でも町の有力者たちの腐りきったところは描かれていた)。小説では、探偵だけが話の行く先をわかっていて、読者であるアタシは何歩も遅れて理解することになるんだけど、この映画でも同じような展開だった(でも少しだけ、映画の描く先をわかった点もある!えっへん)

と書いたけど、日曜の午後は微睡んでしまうので、何回も何回も寝落ちして、何回も何回も戻して観直したのが正直なところ。でも微睡みたくなるのは(自分も この映画も)悪いということではないと思う。どうやら今作は、フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮で、ヴェンダースは請負仕事だったみたい。ヴェンダースとコッポラは折り合いが悪かったそうだ。たしかにロードムーヴィーを得意とするヴェンダースらしさは ない。そのことを知ると、今作におけるヴェンダースの悪戦苦闘は、DUNEにおけるリンチ監督のそれとも重なってきて(わたしの勝手な妄想、こじつけです)、なんだかこの作品も憎めないなぁと思ってしまう。
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