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ハメットのtakのレビュー・感想・評価

ハメット(1982年製作の映画)
3.4
「マルタの鷹」で知られるミステリー作家ダシール・ハメットを主人公にした小説を、フランシス・フォード・コッポラの製作総指揮の下、ヴィム・ヴェンダースが監督を務めたアメリカ資本の作品。コッポラはプロデューサーとして才能ある監督と組んだ仕事がちらほらある。黒澤明の「影武者」、アグニェシカ・ホランドの「秘密の花園」、初期のジョージ・ルーカス作品もコッポラが製作者として名を連ねている。

ヴェンダースをハリウッドに招いて撮った「ハメット」は、正直言うと居心地が悪い映画だ。探偵事務所を辞めて執筆に力を注ぎ込み始めたハメットが、友人の頼みで中国人女性を探すことになる。そこから事件に巻き込まれるハードボイルドな作風の作品。探偵小説は、事件の経緯から解決までを鮮やかに観客に示したいのが常道。僕はこの映画を観て、コッポラはストーリーテリングに力を注ぎたいと思っているが、一方ヴェンダースは登場人物それぞれのキャラクターを掘り下げたいのでは、と思った。どっちつかずな印象を受けるのだ。

作家自身が自分が書く小説のような事件に巻き込まれるお話。都会の闇の迷宮に巻き込まれるような、いい雰囲気がある。だけど引き込まれる魅力かと言うとちょっと違う。いろんな感想を読んでも、スタッフやキャストの豪華さに触れるものはあっても、映画自体を讃えるものは少ない。きっと何か物足りなさがあるのだ。ヴェンダース色を期待しても、コッポラ色を期待しても、どちらも薄味に感じる。

一説にはコッポラが一部撮っているとも言われるし、口を出しすぎてヴェンダースと対立したとも聞く。普段の作風とはちと違うジャジーなジョン・バリーの音楽は好みだったけど、本編はちょっと印象薄。
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