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外科室のkuuのレビュー・感想・評価

外科室(1992年製作の映画)
4.0
『外科室』
製作年1992年。上映時間50分。
畠芋之助こと泉鏡花😊の同名小説(既読)の映画化。

時は明治。
高峰医師によって、貴船伯爵夫人の手術が行われようとしていた。
しかし、伯爵夫人は麻酔を受付けようとしない。
麻酔をかぐと、心に秘めた秘密をうわごとで云ってしまう、そのことを恐れているのだという。
ついに麻酔をせずに執刀をはじめたとき、夫人はメスを握る高峰の右手を掴み。。。

この映画を観ながら思い出した俳句があります。

わが恋は 人とる沼の  花菖蒲

師であった尾崎紅葉の影響もあるやろけど、この映画の原作者 泉鏡花が詠んだ俳句です。

俳句の意味を書くのは野暮ですが、
『私の恋は、泥沼から花菖蒲をとるようなものだ』と禁じられた恋について詠まれています。
菖蒲を別名
『あやめ』と云う呼び方で詠んでいるところが、
『恋の過ち』
とかかっているとも解釈できるかな。
将に作品の物語が春ならその後に詠まれた俳句なんちゃう?
なんて何の証拠もないですが妄想しつつ鑑賞しました。
俳句で詠まれてる全ての想いが描かれているような映画でした。
映画の前後を彩る満開の桜と、眩しく鮮やかな躑躅の壁赤。
まるで潔い初恋を思わせました。
また、その想いを描き奏でるかのように
ヨーヨー・マとエマニュエル・アックスが奏でる
ラフマニノフの
チェロ・ソナタ ト短調作品19 第1、3楽章が花を添えてました。
唯唯二人はすれ違い。
見つめ合い。
交わす瞳と瞳だけで心を通い合わせる。
私的ながら吉永小百合と加藤雅也は原作通りの二人やったかな。
ないよなぁ現代にはこないなプラトニックは。
数ある鏡花作品の中で『外科室』ちゅうのを映画にしたいんやって監督の思い入れを強く感じる作品やし、描かれてる全てが美しい。
鏡花世界を映像化すんのは難しかったと思いますが、ほんと美しく限りなく耽美的世界を上手に描けてたと思います烏滸がましい感想ですが。
余談ながら仏国人の友達から借りた一品です。映画フリークの仏国人たちも絶賛してた作品だそうです。

雨脚が酷いところもありますので皆さんお気をつけてください。
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