三隅炎雄

ごろつきの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

ごろつき(1968年製作の映画)
3.3
高倉健の任侠キックボクシング映画。降旗康男が撮った2作目『ごろつき無宿』はテキ屋の話に変わる。同じ九州の炭鉱町から上京する話でも、2作目が坑道事故で死ぬ間際の父加藤嘉が「ここは地獄だ!こんな所にいては駄目だ!」と息子高倉に故郷を捨てさせる厳しい社会派調の出だしなのに対し、こちらは貧しい炭鉱労働者仲間の人情に支えられての一念発起とマキノ節。故郷を捨てる高倉健と菅原文太のコンビは、まるっきり股旅映画の感覚だ。

全体にとっちらかっていてマキノ映画としてはそれなり。仕上がりは2作目のほうが断然良い。それでも文太ギターで歌う健さん「網走番外地」「唐獅子牡丹」、元気いっぱい吉村実子、いぶし銀の名演石山健二郎と見どころはある。あとキンタマスプレーか。フーテン族描写のやる気の無さにはぶったまげた。

おでんのコンニャクを食らいつく菅原文太の飢えたイメージが異様に生々しく、この作品では高倉健より脇の菅原文太の方に目が行く。彼が『現代やくざ』シリーズで主役を張る前年の映画だ。
三隅炎雄

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