TaiRa

地獄の警備員のTaiRaのレビュー・感想・評価

地獄の警備員(1992年製作の映画)
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黒沢清が好きな事やれてる感じが出てる。根岸憲一の撮影も良い。

総合商社の絵画取引やってる新設部署って設定がバブリー残り香過ぎて最高。時期的にはイトマン事件の直後くらい。元相撲取りのサイコ殺人鬼が新任警備員としてやって来て死体の山が築かれる話。映画デビューの松重豊が実寸よりデカく撮られてるのもおもろい。『予兆』や『スパイの妻』の東出昌大に至るまで、黒沢清の中では「デカい奴こわい」がベースにあるのが分かる。そもそも相撲取りが怖いって発想は、筒井康隆の『走る取的』から持って来たんかな?と思ったが、黒沢曰く「筒井康隆は好きだが、制作時に意識してた訳ではない」らしい。筒井のも今作も、怖さは動機なき狂人の不条理さにある。要は『激突!』翻案。殺人鬼が虚無的で、何か目的がある訳でもないのが怖い。『ノーカントリー』のシガーが一番近いか。黒沢的にはフーパーやカーペンターをやりたかったのが如実に出てる。『悪魔のいけにえ』の躍動感と『ハロウィン』の冷徹さが同時にある。無感情で事務的に人を殺す様はマイケルっぽい。ちょうど『羊たちの沈黙』の直後だから諸々影響受けてる。被写体に対して正対して撮ってたり。エレベーターホールで男ばかりの中にポツンと女性がいる画を作ったりしてるのも、FBI内でのクラリスが元にありそう。長谷川初範がジャンル映画的な「かっこいい男」過ぎてワロタ。
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