シズヲ

アメリカを斬るのシズヲのレビュー・感想・評価

アメリカを斬る(1969年製作の映画)
3.7
1960年代後半、カウンターカルチャー隆盛期のアメリカを捉えた作品。それも単なる実録映像に留まらず、ジャーナリズムを起点にした大胆な映画になっている。冒頭から冷淡な取材の場面が映し出されるように、報道のジレンマや本質めいたものが強調されている。それを映し出す本作もまた『映画』というある種の報道媒体であり、冷徹にカメラが回る結末の場面を思うとその点も興味深い。

監督がカメラマンなだけあって、暴徒鎮圧演習や民主党大会などのドキュメンタリーめいた場面の撮り方が印象的。露骨なあざとさや主張もなく、異様なまでに冷静に映し出される映像の臨場感は凄まじい。それだけに合間に挟まれるドラマ要素も生々しさを帯びていて、幾度となく繰り返される「ジャーナリズムの本質」への問答も相俟って虚実が入り交じるようなインパクトに溢れていた。

とはいえ何度も挟まれるドラマ部分が冗長な印象もあるし、話の構成もぶつ切りで乱雑に繋げられている感はある。良くも悪くも淡々としているだけに、展開で引っ張られるような要素も薄い。そういう意味で純粋に面白いという訳ではないんだけど、極めて冷静かつ挑戦的な題材・映像だけでも十分印象に残る一作。
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