男の子映画道場

アメリカを斬るの男の子映画道場のレビュー・感想・評価

アメリカを斬る(1969年製作の映画)
3.0
ロバート・フォスター追悼。
マーシャル・マクルーハンの言葉を借りて、テレビ的な「クール・メディア」をテーマにした作品。まず、タイトルバックまでの流れがとてつもなくクールなのだ。
カメラマンの命題はやっぱり撮り続けることでしかなくて、撮り続けることでメディア自体が意味を為していくという、マクルーハン的なメディア論に基づいた概念を、これまたマクルーハンの言うとこの「ホット・メディア」である映画で表現してるわけで、これはもう名カメラマンであるハスケル・ウェクスラーにしか作れない(撮れない)という点で無二な映画。ドキュメンタリータッチの作品は数あっても、ここまで撮るという行為それ自体にフォーカスした作品も珍しい。しかも、フォート・リプリーの軍事演習もシカゴの黒人居住区での取材も、肝になるシカゴの民主党大会も、実際の現場に役者を放り込んで撮っているので、淡々とした温度感とは裏腹にヒリヒリしたシークエンスばかり。まだ若々しくてカッコいいロバート・フォスターも俳優然とした感じがあまりないヴァーナ・ブルームも話が進むにつれて緊張感のある場面に放り込まれて、観てるこっちもなかなかにヒリヒリしてしまう。雑多で、緊迫していた当時のシカゴの街を表現するようなフランク・ザッパの実験的な音楽も良い。ちなみに映画音楽でザッパの曲が使われたのは本作が初めてとのこと。
この、シカゴという街に対する強いこだわりと徹底的なジャーナリズム精神は本作で撮影スタッフとして参加した『逃亡者』(1993)のアンドリュー・デイヴィス監督にも受け継がれていく。(1554)
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