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蜘蛛の瞳/修羅の狼 蜘蛛の瞳のmのレビュー・感想・評価

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黒沢清監督が柴咲コウ主演でフランス映画としてセルフリメイクした6月日本公開の「蛇の道」、そのオリジナル版の続編。

日本映画史上トップレベルの恐ろしい邪悪な結末を迎えた前作から一転、脚本から高橋洋が抜けたせいもあってか、復讐を終えた主人公が受動的に巻き込まれていくゆるりとした事態の物語はどこか弛緩している。その一方で演出と編集の切れ味は抜群で、そのギャップが妙な不穏さと可笑しさを醸し出す。全体的に漂う遊戯性は面白い事に北野映画のテイストにちょっと接近している感じもする。

新宿都庁近くの路上で歩く哀川翔と並走する車上の大杉漣の可笑しくて滑稽なのにやたら撮影難易度の高いショット等、相変わらずの黒沢清的映画の運動が全編で炸裂。ひたすら愉しいです。

哀川翔と90年代黒沢清映画の相性はやはり抜群に良い。あと今作に関してはダンカンの暴力性が凄く活きている。
「回路」の菅田俊は至高だと思っている自分としては今作の菅田俊は「回路」に並ぶ良さで、本当に妙な役なんだけどこれが実に良い味わいで最高だった。そして大杉漣さん、本当に良い役者だった・・
若かりし頃の阿部サダヲが登場、黒沢清映画との相性の良さが垣間見える。城定秀夫監督「悦楽交差点」でお馴染み佐倉萌も当時やっぱり若い!

全てが終わった後に続く厭な感じが、復讐と暴力の厭さをそのまま捉えている。
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