なぜに埋もれていた、こんな名作が。派手さはないが、丁寧に作られた本格スパイ映画。
若干の経年劣化はあるにせよ、次から次へと迫り来る危機的状況の演出や、各都市のロケによる異国情緒を生かした追跡劇、地味ながらも唸らされるスパイ・テクニックの数々や、臨機応変な地下組織の連携体制など、スパイものならではの醍醐味に溢れている。
何より、スパイ行為の成果のみならず、活動が及ぼす負の側面や苦悩、駒として扱われながらも揺るがない個々人の尊厳までがきっちりと描かれているから、最後には静かで深い感動がある。
感動ついでに余談だが、マニア的には、その病的な顔つきと目力にどこか既視感を覚えていたら、後からクラウス・キンスキーだったと気づいて納得。