TaiRa

狼の死刑宣告のTaiRaのレビュー・感想・評価

狼の死刑宣告(2007年製作の映画)
-
ジェームズ・ワンがどちらかと言えばアクション畑なの表明出来た作品。

『狼よさらば』のブライアン・ガーフィールド原作で、どれもこれも似たような話ばっかだなと呆れつつ、一定の面白さがある「街のダニ共死刑に処す」系で楽しい。完全に頭のおかしな殺人おじさんになってたチャールズ・ブロンソンとは方向性違って、普通のパパがどんどん暴力の世界に引き摺り込まれて行く感じ。ケヴィン・ベーコンのマッチョ性皆無な佇まいが、その方向に説得力持たせる。素人故の脇の甘さがスリリングさを生むのだが、ちょっと脇が甘過ぎるよね。まずは家族だけでも避難させるとかしないのか。暴力に取り込まれる感じをもっと陰惨に描けば『わらの犬』みたいになって好みだったけど、まぁあくまでヴィジランテ物の範疇に収める必要があったのでしょうがない。中盤のギャングに街中で襲われる逃走劇シークエンスは、勢いと構成の妙があって好き。立体駐車場の長回しも分かりやすく凄いのでジェームズ・ワンの特徴出てる。後の作品で凝った撮影多用する流れはここくらいからかな。要所要所で詰めが甘いお話なのだが、短所より長所がチャームになっているとは思う。頭剃って遺品の革ジャン着て武装する場面は、ちゃんとアガる。自分で剃ってるから後頭部だけ髪が鶏冠みたいになってるアイディアが良い。出来れば試し撃ちとかして訓練する場面も欲しかったな。リアルで言えば必要だし。ギャング集団の描き分けが割と適当なので、誰を倒したのかよく分からないのはもったいない。ギャングの一人にリー・ワネルいたんだけど気付かなかった。結末は円環になっててきれいだけど、『タクシードライバー』の真似するくらいなら教会で止め刺してズバッと終わるくらいが良かった気がする。ジェームズ・ワンが「『ソウ』の人」を脱して、『ワイスピ』や『アクアマン』まで出世するキッカケになったとも言えるし、彼のキャリアでは一番重要な作品かもね。
TaiRa

TaiRa