ほーりー

戸田家の兄妹のほーりーのレビュー・感想・評価

戸田家の兄妹(1941年製作の映画)
3.7
昨日よりエアロバイクを買いまして、このコロナ禍でなるべく外出しないように、自転車こぎながらDVD観てます。

さて勝手に小津映画特集。続いては『戸田家の兄妹』。戦前の松竹オールスター出演映画でもある。

この後の『父ありき』と立て続けに観ると、小津映画で登場人物が「ああいい気持ちだ」とか「酔っ払ったかな」が言うと死亡フラグであることがわかる。

大金持ちの戸田家の当主(演:藤野秀夫)が急逝し、妻(演:葛城文子)や成人した子供たちは途方に暮れる。

というのも華々しい生活の裏ではかなりの借財があることがわかり、返済のために本宅や貴重な骨董品などを処分することになった。

亡父と同居していた母と三女(演:高峰三枝子)は、長男(演:斎藤達雄)の家に身を寄せるが、やがて長男の妻(演:三宅邦子)との仲がしっくりいかなくなる。

居づらくなった二人は今度、長女(演:吉川満子)のところに頼るが、性格のきつい長女から段々と邪険に扱われるようになる。

次女夫婦(演:坪内美子、近衛敏明)も二人が自分たちのところへ来ることを嫌がっている様子なので、仕方なくあばら家となった別宅で暮らすことにした。

そうこうしている内に父親の一周忌をむかえる。そこへ父の死後に天津に移り住んだ次男(演:佐分利信)が帰国してくるのだが……。

本作のテーマは居場所。のちに『東京物語』でも描かれたテーマがこの時既に描かれている。

本作も『東京物語』の杉村春子や山村聰のような冷淡な子供たちが登場する。ただ本作には『東京物語』と違って子供らに説教する場面がでてくる。

以前、『東京物語』のレビューで書いたが、『東京物語』の凄いところは、たとえ親子でと時を経ればやがて心は離れていくことを表面上肯定しながら、その裏側では原節子を通してやんわり否定している点だと思う。

本作は表立って不人情な奴らにガツンと言って溜飲が下がるものの、『東京物語』と比較すると少しストレートすぎる内容に感じる。

『戸田家の兄妹』から十二年もの時を経て、磨きに磨いて出来たのが『東京物語』なのだろう。

■映画 DATA==========================
監督:小津安二郎
脚本:池田忠雄/小津安二郎
音楽:伊藤宣二
撮影:厚田雄治
公開:1941年3月1日(日)
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