ミサホ

マタギのミサホのレビュー・感想・評価

マタギ(1982年製作の映画)
4.0
秋田県阿仁町のマタギ。
阿仁町といえばマタギらしい。

熊による獣害の歴史に興味があって、関連する本や漫画なんかはよく読んだ。

そして熊といえば、つい先日、捕獲された“OSO18”。NHKのドキュメンタリーもいくつか観て、特に直近のは良かったな。


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さて、本作は、西村晃演じる老マタギと孫の太郎、そしてマタギ犬のシロとその子犬チビの、巨熊との戦いを描いた物語。

冒頭、村のマタギがチームを組んで熊を仕留めるシーンはなかなかの迫力である。“山神様”といわれる熊は丁重に弔う。それが伝統であり、しきたりなのだ。

熊の腹を捌いて抜き取る熊の胆(くまのい)はそれはそれはすごい効能の生薬なのだそうだ。本作では、それを乾燥させて、湯に溶かして飲んでいた。

マタギのための“射撃大会”やマタギ犬を評価するエントリー大会みたいなのがあって、当時の阿仁町独自の慣習、文化も垣間見ることが出来る。

歴史の教科書だよね。

引退も近いマタギの平蔵(西村晃)は、過去に顔に大きな傷を負わされた巨熊を追っていた。いずれ奴は人間を襲うのではないか…それを危惧して。

子犬のチビもマタギデビューに備えて、過酷な訓練に日々励んでいる。でも、小柄で、非力なうえ臆病なんだよなあ。

立派なマタギ犬になれるだろうか

そんなチビを溺愛する少年、太郎は優しい子だ。そして可愛い。元気いっぱいだし、友達とも仲良しだ。そんな彼がいつの間にか過酷な巨熊狩りに付いていくほど、逞しくなっていた。

果たして、平蔵、太郎、チビの、巨熊との対決の行方は…

雪山だけの単調な景色ではなく、秋田の四季や音楽にも工夫が凝らされていて、飽きずに観られる。ストップモーションをちょいちょい入れる不思議な編集はあったけれど、最後まで集中力が途切れることはなかった。

それに、この巨熊、撮影のために北海道から連れてきたヒグマだそうだ。そう、本物なのだ!そのド迫力は画面を通しても十分に伝わってくる。

素晴らしい作品だった。

阿仁町のマタギ文化、熊に対する畏怖の念を抱き、自然と共生する人々の生き様を見た。

また観返したい。
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