イチロヲ

マタギのイチロヲのレビュー・感想・評価

マタギ(1982年製作の映画)
4.0
巨大熊を目撃した老年のマタギ(西村晃)が、周囲から奇異な目線を向けられながら、伝統を重んじる孫との交流を続けていく。現在の北秋田市を舞台にして、自然と調和するためのマタギ文化を描いている、サバイバル映画。

引退間際の老マタギがメンターとなり、失われつつあるマタギ精神を次世代へと引き継いでいく。マタギは人間と犬の信頼関係を主としているため、犬に対する厳しい訓練模様が、虚飾なしに収められている。

老マタギの最後の大仕事と後継者問題に関連するドラマが段階的に描かれるため、純粋なエンタメとして楽しむことが可能。動物同士を対峙させている格闘シーンが衝撃的であり、「どうやって撮ったんだろう?」と思わせられる映像が連発する。

「野生の熊は、山神さまからの授かりものだから、ありがたく頂く」という、都合の良い山岳信仰に縋りついていながら、まったく個人的な敵愾心までもが渦巻いていく。このアンビバレントな不条理性こそが最大の醍醐味。
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