さわだにわか

マタギのさわだにわかのレビュー・感想・評価

マタギ(1982年製作の映画)
4.0
最近の映画にはエンドロールの末尾に撮影に際して動物は傷つけておりません的なテロップが載ったりするが間違ってもそんなテロップは載せられない過酷どうぶつ映画。巨熊殺しに執念を燃やすマタギの西村晃が熊の毛皮で熊に変装してかわいらしい秋田犬を折檻調教、熊脂を無理やり食わせて強制猟犬化!

地元猟友会全面協力的な猟犬コンテストの場面ではリアルに小熊と猟犬が戦っておりまるでモンド映画のようだ、テロップを出すならむしろ「撮影後はスタッフがおいしく頂きました」が適切な過酷っぷりであった。食べてないと思いますが。

なんだかキワモノっぽいがお話的には真面目なもので、寒村の苦しい生活とか無邪気な子供時代の終わりとかを丁寧に掬い上げていく。リアリズムのタッチで描かれる熊退治のロケ場面は白眉。西村晃の濃演と相俟って一度見たら忘れられない迫力がある(雪上の熊はどうやって撮ったんだろう)

初めは遊びのつもりだったがいつの間にかマタギ道に入って後戻りできなくなってしまった子供は切なかった。因縁の熊殺しだけが生きるよすがの西村晃の孤独もまた切ない。結構切ない映画でした。
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