イチロヲ

越前竹人形のイチロヲのレビュー・感想・評価

越前竹人形(1963年製作の映画)
4.0
年季明けの元遊女(若尾文子)と結婚した青年(山下洵一郎)が、かつて嫁の情夫だった亡き父親の幻影を抱えてしまう。水上勉の同名小説を映像化している、ヒューマン・ドラマ。

竹細工の巨匠として名を馳せた、亡き父との見えない三角関係のドラマ。父親の重荷により嫁を嫁とは思えなくなった青年。遊廓の束縛から解放されたにもかかわらず、幸せな生活を掴みきれない女性。その両者の悲哀とやるせなさが綴られていく。

19歳のときから女郎を続けてきたという若尾文子が、あれほどの美貌をもっていながらも「太夫」の位になれないのは、些か不自然に感じられる。また、男性視点で描かれていることもあり、女郎が嫁に行く気になった理由付けが、イマイチ伝わってこない。

とはいえ、幸せを引き寄せることができない、日陰者の哀感が十分に伝わってくるため、ドラマに強大な訴求力が備わっている。退廃的なアングラ芸術を鑑賞しているような気分に浸ることが可能。
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