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アラバマ物語のYAEPINのレビュー・感想・評価

アラバマ物語(1962年製作の映画)
4.4
アメリカ映画の歴史に常に高い評価をもって輝く映画、という印象だったが、これほどまでに多層的な物語が描かれているとは。

あらすじだけ読んで法廷ドラマが中心かと思いきや、語り手は弁護士アティカスの娘であり、あくまで子供からの視点で物語は進む。それゆえ、分かりやすい人種差別だけでなく、子供が加担してしまうほど日常に根付きたあらゆる差別や偏見が描かれる。
女性が身体的、精神的に抑圧されている様や、恐らくハンディキャップを抱えていることで隣人であっても社会から排除されてしまう様などが、克明に描かれていた。

また本作の素晴らしい点として、そういった差別的感情に基づく攻撃性への対処の仕方もしっかりと提示されている。
一般にヘイトスピーチや差別的言動は、自身の生活にある不満や苦悩が暴発した結果であることが多い。
ヘイトや暴力の抑制には、他者を攻撃しようとする人個人の置かれた境遇に寄り添い、サポートを行うことも重要であることを感じた。

100年前のアメリカが舞台であるゆえ、グレゴリー・ペックが「ニグロ」という言葉を使い、黒人女性が当然のように家政婦として雇われているので、この映画で描かれる状況を全くそのまま礼賛する訳にはいかない。
とはいえ非常に分かりやすく人権と法の下の平等を語る作品であり、アメリカでオールタイム・ベスト級の映画として受容されているにもかかわらず、何故いまだにBLM運動をしなければならない社会なのか。
物語と現実をリンクさせ、自分の言動を顧みることが、いかに困難であるかを考えてしまう。

ロバート・デュバルをキャスト陣に見つけてからずっと作中探していたが、アンタ、そこにおったんかい!
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