作家ハーパー・リーがアメリカ南部で育った幼少時代を題材に描いた社会派映画。
1930 年代、白人女性をレイプした罪で逮捕された黒人男性の弁護を引き受ける父と彼の子供たちの物語である。
モノクロ映像ながら、オープニング・タイトルのセンスの良さは、近年の映画とも引けをとらないものだと思う。
学生時代に観たころはそれほど面白い作品とは感じなかったが、つい最近観返してみたら、これがどうして最後まで釘付けになってしまった。
鑑賞後にまず感じたのは、何がものまね鳥で、何がそうでないのかをジャッジすることの難しさである。黒人や自閉症患者といった弱者がないがしろにされて当たり前だったあの時代、自分もフィンチ親子のような判断ができるのだろうかと頭にふと浮かんだ。
人種差別や偏見が根強いアメリカ南部で、ひとり果敢に正義を守るために黒人の弁護に立つ父アティカスを演じたのは、本作でオスカーを獲得することになるグレゴリー・ペック。
本作はペックのキャリアの中でも最大の当たり役と言われ、のちにアメリカ映画協会が選ぶ史上最高のヒーロー・ベスト100で、インディ・ジョーンズやジェームズ・ボンドを抑えて第1位にも選ばれたほど。