イペー

ストリートファイターのイペーのレビュー・感想・評価

ストリートファイター(1975年製作の映画)
3.4
賭けケンカを生業とする、行き場のないダメオヤジ達。
ケンカ自慢のチャールズ・ブロンソン。
バクチ狂いのジェームズ・コバーン。

胸焼けを起こしそうな"おっさんエッセンス"が凝縮された絵面で、もはやシブさの域を超越してます。

イカついコワモテ連中によって繰り広げられる、穏やかに間延びした"どつき合い"。

モーション丸見えの大振りパンチ。
相手の肉体に、いかほどのダメージを与えているのやら…。
ゆったりと時間が流れる、脳に優しい格闘シーンの連続。

せめぎ合い、馴れ合う。
生まれる微かな連帯感。
哀愁と呼ぶまでには至らず、終始ショボくれた空気が漂ってます。

やはり、多くは語らないブロンソン。
言葉に頼らず、拳で語り合う…というワケでもない。
作中では顔や背中こそが雄弁、マンダム語が公用語。

切った張ったの勝負の世界を描きながら、真っ当に生きられないという意味では、オヤジ達みんなが人生の負け犬でもある。

いい歳こいて、腕っぷしの強さくらいしか誇れるものがない…。
闘うダメオヤジ、皮算用のダメオヤジ、一喜一憂のダメオヤジ…。

しみったれた共犯者意識で全てがなし崩しになっていき、ダメオヤジ達はどこまでも懲りないまま、なのであります。

ハラハラドキドキとは無縁の、男の世界。
熱い…のは熱いのですが、作品全体を覆う熱は、非常に伝導率が低い。

「面白い映画? …甘えるんじゃねぇ‼︎」

ウォルター・ヒル監督の無骨過ぎる演出。親切丁寧な現代のエンタメに慣れた、怠惰な鑑賞態度を寄せ付けません。

オヤジ達のクタビレた空気を噛み締め、ため息混じりに日々の暮らしを思う…そんな映画です。

…勝ち負けとか損得とかに躍起になっていては、ブロンソンの領域にたどり着くことは難しい。
背中で語れる男を目指す自分、本作を観て、その道のりの険しさに気が遠くなるのでありました…。

う〜ん…マン…ダ…ム…。
イペー

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