半兵衛

乞食大将の半兵衛のレビュー・感想・評価

乞食大将(1952年製作の映画)
3.0
主君に逆らいフリーランスの生活となるも自分の意思を貫いて敢然と負け戦に挑む戦国武士の物語は特出した面白さはないけれど、1945年8月という太平洋戦争終了のさなかに撮影された作品だということを踏まえると主人公の後藤又兵衛の生きざまに作り手たちが出来なかったことを託しているようで感慨深くなる。

粗野だけれど武士としての誇りを持つ主人公を市川右太衛門が熱演、ラストの自分を仇と狙う若い武士を諭しつつ敵味方として対峙する大阪の陣で会おうと語る演技がかっこいい。

戦ばかりではなく政略で家康に取り込む黒田長政(大河ドラマでは松坂桃李が演じていることで有名)と戦で手柄をたててきた後藤又兵衛のすれ違いがあまり描かれていないので時代から取り残される戦国武将と台頭する官僚としての武士というドラマのテーマが生きていないのが残念だけれど、時代から見離されても自分の生き方を通す武士の心情を謳ったドラマとしてはありかも。

でも国家総動員という時代のなかで大勢に反発して生きる人物を描いたドラマが検閲をパスできずに公開されたのが7年後の戦後になってしまいテーマが伝わらなくなってしまったのが皮肉。
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