紫のみなと

太陽はひとりぼっちの紫のみなとのレビュー・感想・評価

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)
4.0
モニカ・ビッティは、顔そのものが宝石のように綺麗でした。
オープニンに流れる曲がすごく良くて映画への高揚感が高まりますが一転、モニカ・ビッティが男と別れようとする冒頭のシーンがいやに長くて、男はしつこいしさっさと別れてくれないかなと少々苛々させられます。そのため、別れてから後のシーンでやっと映画が動き出した感あり、ようやくモニカ・ビッティの美しさに没頭できるようになります。

本作においてモニカ・ビッティはほとんどボートネックのカットソーとスカートの上下で、一見ワンピースのようにも見える衣装でひたすらモノクロの世界を彷徨い歩く。ボートネックがめちゃくちゃ似合っていていい女感が溢れ出ていますが、そんな中で一度だけ纏ったフリルの白シャツ姿も強烈にクール。アンニュイな表情、不安げな表情、しかめ面からの突然弾けたように笑うギャップがとてもいい。モニカ・ビッティヘアと言っていい程のライオンの立て髪みたいなヘアスタイルもモニカしか似合わないと思わせる。一体誰が考えついたんだろう。
アラン・ドロンもものすごく若くて、主演の2人があまりにも美しいために、どのシーンもどのショットでも、切り取って額に入れれば現代アートのレベルです。

につけても、いくらアラン・ドロンにあやかろうとしたとはいえ、邦題がよくない。原題「日蝕」のままでいいのではないか。全く太陽のイメージのない本作、むしろ夜の印象が強い映画。モニカ・ビッティが真夜中に犬を追いかけるシーンや、株の暴落で5000万リラを失った男の後をつけるシーンなどが個人的に好きです。
映画監督が蜜月にある主演女優の美しさを最大限にスクリーンに焼き付けた映画であり、そういう映画は個人的に好きです。

証券取引所の喧騒、男たちの罵声、世界から消えた金、水死体、ケニア、空に浮かぶキノコ型の塔、全編通じて台風の前のような風が吹き、そして、突然の「核」の文字、ラストの数分間は主演の人間が誰もが出てこないショットの連続の不穏さが凄い。