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人工の夜景のcoroのレビュー・感想・評価

人工の夜景(1979年製作の映画)
3.8
お気に入りのフォロワーさんから教えて頂いたクエイ兄弟の処女作。旧東欧諸国のように暗くて幻想的なストップモーションアニメ。

共産主義を象徴する色の路面電車が夜の帳をゆっくりと駆け抜けていく(夜が更けていくにつれ、その色の持つ意味合いは変化していきながらも、またふりだしに戻る)。部屋の外から響く車輪の音に耳を傾け夢想にふけるひとりの男。路面電車の吐息に微睡み、うとうとしていると心と身体が離れて浮遊する。自身が電車と化して木装路の上で機械的に和らいでみたり、電柱の傍らに佇んだりする彼を見ながら、決して共有することの出来ない彼の秘密に触れてみる。
孤独な男が夢見る幻想から生まれるささやかな風

文学的とも言える虚構空間に映えるこの時代特有の陰鬱さが美しい。とりわけ心に残るのは希望を連想させるパンタグラフ。延々と闇夜に煌めく金属の背骨と同化し冷たくなった彼の身体から哀しみだけが伝わってくる。
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