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人生劇場の東京キネマのレビュー・感想・評価

人生劇場(1983年製作の映画)
2.0
松方さん追悼の4本目です。 前回の『人生劇場 飛車角と吉良常』から15年、どちらかと言うと原作に近い青春劇としての『人生劇場』で、筋運びも飛車角ではなく瓢吉が中心になってますので、前作から継続しているものは全くありません。 監督はなんと深作欣二、佐藤純彌、中島貞夫三人の連名。 なんじゃこれ、と思ったのですが、それぞれが『青春篇』『愛欲篇』『残侠篇』を撮影し、それを一本にしたということらしいです。 なのでオムニバスではありません。

これね、おそらく脚本がまとまらず、面倒くさいからそれぞれの解釈でやってくれって話なんじゃないの。 今までの『人生劇場』のような時代が変わる儚さというか、歴史的文脈のニュアンスがなくなってしまったのはそのせいだと思いますよ。 肝心の松方さん、なんと今回は飛車角で登場します。 完全に「仁義なき・・・」の型の芝居、見栄の切りまくりです。 見てるこっちが恥ずかしくなります。 この映画見ながら思ったんですけどね、松方さんてみんなが思う以上に、本当は芝居が上手い人なんじゃないかって。 監督の指示通りになんでもこなせる人のような気がしますね。 15年前の『人生劇場』ではピュアな文学青年の瓢吉を演じ切った役者が、まるっきり対極にあるような飛車角を演じれるって、ある意味凄いと思いますよ。 でもね、それもいい監督あってのお芝居ですからね。 こういった最低の映画には出なかった方が良かったと思います。 ですけど、東映に居る限りは無理ですからね、仕方ないことなんです。

全体的に言えることなんですが、この映画、日本映画の悪い要素を全て持っています。 あり得ない設定、間のないセリフ回し、鬱陶しい芝居、それに、なんでもかんでもナレーションで説明する物語の運び、などなど・・・。

映画って、たった15年程度でこれだけ劣化するもんなんですね、見直して本当にビックリしましたよ。
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