足拭き猫

サウダーヂの足拭き猫のレビュー・感想・評価

サウダーヂ(2011年製作の映画)
3.7
「チェンライの娘」が憧れの地タイに実際に行き、ある種の解放感があったが、こちらは不況になっていく地方や巻き込まれるブラジル人、日本のシステムに組み込まれたタイ人などを描いて内向き。精司がタイに理想郷を求めるもミャオに否定されることで、作り手が今までの自分たちをも否定してるような気もした(その次の「サウダーチ」の舞台はタイだが)し、精司、猛、工事現場の人たち、精司の奥さんが属する怪しい団体やラブ&ピースにはまっているまひると同級生の関係、さらにブラジル人やタイ人など複数のコミュニティがあり、今までの素朴な作風が複雑になって「大人になった空族」という感じ。

ひとつの街に3つの別々の世界がありつつも、みんな夜は姉ちゃんと飲んだくれていて国籍は違えどやっていることが全く同じなのが笑ってしまうのだが、それでもお互い対立してしまうことの滑稽さ。猛が好きなラップで挫折し正義感がねじれてしまうのが切なかった。

同時期に地元が全国で2番目に日系ブラジル人が多かった土地なのだが、彼らはどこに住んでいてどこで遊んでいたんだろう。

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「チェンライの娘」についてFilmarksにないためこちらに記載

3月16日鑑賞
日本映画専門チャンネルの空族特集にて「チェンライの娘」 ★3.9 

都会と地方どっちなんだと言ったら地方、というのが空族なのか、と思った作品。

なんとも心許ない日本人のおじさんをだましてお金を盗もうとするタイの娘たち。彼女たちがそもそもだまされていた、いや、勝手に勘違いしていたのだが、ニセ一万円札と美女に囲まれたビジュアルからこういう展開になるのかぁとフフっと笑ってしまった。人間やろうと思えば炎天下で何キロでも歩けるものだ!ではなく、映画なのでそれが可能であり(笑)。水牛の群れや象使いの現地のおじさんなど未知のものを見かけつつ田舎道を行くロードムービーがなんとも愛らしく、華やかでいい加減に見えることの裏にある心の素朴さが信じられて良き。