5loth

サウダーヂの5lothのレビュー・感想・評価

サウダーヂ(2011年製作の映画)
3.3
甲府の街を描くことで、社会全体を暴いてしまったような作品。

閉塞感、という単語だけでは表せない状況。誰もがどん詰まり。行き場がない。甲府はこんなことになっているのか、という素直な感想の後に、これはもう日本全体の状況なのかもしれないと恐くなる。まったく他人ごととは思えない。土方。移民。彼らをスケッチしていく。圧倒的なリアル。

登場人物達の言葉や考えは、どれも状況を打開するものではない。行ってしまえば薄っぺらで、表層的。しかし、そういう考えしか持ち得ないということの奥に見えてくるものがある。これは社会の抱えた問題なのだ。個人が立ち向かえるものでないのか。絶望的だ。

ラストカットの笑顔の意味。そこから抜け出す為には、自殺(のような行為)をするしかないということなのか。個人を見ていけば、特に閉塞を感じていないように見える保坂やまひるは社会から逸脱してしまった向こう側の人。もしくは恵子のように政治の歯車になるしかないのか。

音楽が生活に根ざすものになっているのがよかった。クラブ。ヒップホップ。アコギを引いて歌う“チェンマイの娘”がよかったなー。タイの曲なのかな。ポップソングじゃない。ポップソングじゃもうだめなのか。

とんでもない地平を描いてる。社会そのものを暴くような。それに映画としての強度もすさまじい。いろんなことが頭をよぎった。すげぇ。

ここには人間が生きている。
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